アカシア食堂レモンの記2

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猫なる居場所を探す旅0:外で原稿が書けるようになりソングラインにも出会えるという壮大な野望の旅のはじめに

ノマドという言葉が流行って久しいけれど、
私は部屋に引きこもって書くの好きな派だ。
 
外出先や喫茶店は
アイディアを思い浮かべるにはいいのだが、
集中して原稿を書くのはなかなかに至難である。
 
音、匂い、光、気配、温度、人の流れ、
会話、体から発せられる音、
いつだって外の世界は常なる刺激が多すぎる。
 
一方、
自分の部屋にある物のすべては私になじんでいて、
気を散らすものはあっても、
気に障るものはひとつもない。
 
だから会社を辞めて、ライターの仕事する予定だった当時、
本格的に部屋に引きこもって書く予定で
その妄想に浮き足立っていた。
 
引きこもって書こうと思ったその時に住んでいた当時の部屋は
16回の引っ越し人生において最高に完璧な部屋だった。
 
この部屋は
日本式も台湾式も中国式もイギリス式も
試し過ぎてすっかり独学風水になってしまったという自分風水史上、
最高の間取りで
 
家賃も史上最高
オートロックとか設備面でも史上最高
近くにある図書館も最高
 
特に部屋からの景色は大好きで
最高すぎて
余りに好きなので
毎日写真を撮るぐらい好きで
 
愛して愛してやまない部屋だった。
 
ここに住むと
気も大きくなって
他人禁制だった部屋に
両親から友達からあんな人まで
とち狂ったかのように泊めまくることができた
史上最高の部屋だった。
 
ところが、
会社員生活が残り2か月になった時、魔が差した。
 
悪魔がささやいたとしか思えない心の声がした。
 
フリーランスになったらこの先引っ越しなどできないかもしれないよ・・・
 
この部屋いいけど土地は静かだから
部屋にいたら根っこが映えるように
本当に部屋の中に漬かって一歩も外に出なくなるかもね・・・
 
一人暮らしだし
人見知りに拍車がかかって
誰とも口を利かずに
誰とも会わずに
一か月ぐらい過ごしちゃうかもしれないよね・・・
 
この家賃、フリーランスになって払い続けるのもったいなくない?・・・・
 
収入なくなったらどうするー?
 
せめて妹夫婦近くに引っ越して
人と話す社会生活を保ったほうがいいのでは…
 
会社という所属場所がなくなる、
居場所がなくなる
繋がりがなくなる
この感覚。
 
会社をやめる直前になって
目を向けてしまった強大な不安は、
 
悪魔のささやきという形に変えて、
私の元へやってきた。
 
そのささやきに
私の中に住んでいる、抑えがたい「引っ越し魔」という小悪魔は
見事に反応した。
 
悪魔と引っ越し魔は仲良しだった。
 
不安を
すさまじい勢いで
後先考えずに
引っ越しという形に変えて
私は動いた。
 
唐突に訪れた
予定にない
人生で17回目の引っ越しだった。
 
 
数年ぶりに、風水という技術も捨てた。
もう極めた感、やり切った感があったので、もう使わなくていいやって思った。
 
自分がいいと思うところがいいところだ!
そう勢い勇んだ。
 
見晴らしがよく
窓の外は抜け感があり、
妹の家から近く
街もいい感じがただよう街で
よしここでいいや、と勢いで決めた。
 
 
そうして気持ちも新たに住み始めてみたら、1週間ほどして、
めまいがしはじめた。
 
よく見ると床が劣化でぼこぼこしている。
 
ドアや棚をよく見ると
下の方が隙間が空いている。
 
ああこの部屋、
ほんの少しだけ、傾いている。
 
 
 
「かたむいているような気がする国道を しんしんとひとりひとりで歩く 」
 
 
 
この名歌、大好きなのだけれど
 
自分の部屋が傾いているからといって
このような文学的な心持には至らなかった。
(名歌を引き合いに出す場面ではない)
 
そんな余裕はなかった。
 
いい部屋なんだ。
外装は綺麗で手入れは行き届いているし
景色よくて抜け感のあるし
このマンションは全室満員だし
 
もしかしたら
傾いているのは私なのかもしれない。
そう思い直してみた。
 
ちょっと自慢をすると
私の体は、会社で一人で食中毒を起こしてしまうという
敏感さを持っている体である。(思い込みという噂もある)
 
18歳まで毎週点滴を受けていたので、
体が一生分の薬を受けたらしく、肝臓は飽和し許容量を超え、
薬はもはや受け付けず、
すべての薬剤に過敏反応するあまり、
ソーセージを食べてもCCレモン的なものを飲んでもじんましんがでる、という敏感さを持っている。
カロリーゼロ製品も受け付けない。
どんなに好きな人に、爽やかに、これ飲む?と人工的な薬品がビシバシ入った清涼飲料水を渡されても、
気持ちだけ、と断るしかのうがないのである。
 
人気の亜麻仁油を食べてもじんましんがでるし、
ガンに効くウコン茶を飲んでも鼻血がとまらなくなるし
とにかく、一般的に体にいいとされているものはすべて
私の体の中では反転され、副作用として出るという特質がある肉体を持っている。
 
(そのために調べまくったデータについてはいつか公開したいという野望もある。
だってフィッシュオイルとかウコンで具合が悪くなった世の中のものすごい少数な貴重な(勝手な)仲間(意識)に発信したいから)
 
泊り慣れないホテルではたまに部屋鳴りが止まらず気配が怖すぎて眠れず
場のおかしな神社や場所に行くと吐いてしまったり話せなくなったりする。
(これについてだって、いっぱい書いてみたいことはある)
 
敏感体質は生きにくいし自分を呪いそうになるのをぐっとこらえて
この体の、センサーの感度のよさを自慢することにして
 
 
話は戻ると、
この部屋の中には、
私の体にとっては、
残念ながら、何らかの理由で、
めまいと出るのである。
 
 
やるせない。
全体的にやるせない話である。
 
しかもしばらくすると、
部屋の外の世界も傾き始めた。
どこにいてもクラクラする。
 
 
私はさらに悲しみに打ちひしがれてじっと手を見た。
でもクラクラはとまらない。
 
もうフリーランスになってしまったから
そう簡単にしばらくこの部屋を動けない。
独身のフリーランスは職業信用度最低ライン、と脅されまくっている。
 
(それは後で勘違いと知った。部屋は借りられる。引っ越しはできる。お金あれば。)
 
手を見ながら悲しみ切ったら、底をついて転換したらしかった。
 
ならば、新しいストーリーを描いてみようかと思い立った。
 
いくら不安をもとにしたって
引っ越しの衝動をすくいとって動けた自分はいいと思っている。
動きの先にはつながる何かは必ず存在するから。
 
もう引っ越ししたのはいいことにする。
そのかわり、
 
向田邦子さんのように、
松村潔さんのように、
原稿書きの友人たちのように、
大好きな文筆家たちのように、
外で原稿を書いてみよう。
 
カフェや図書館、
机と椅子と屋根があるところならどこででも
原稿を書ける人になってみたらいいのではないか。
 
もう自分の部屋って概念を
風水のときみたく、手放してみればよいのではないか。
 
高橋歩も、はじめは慣れないカフェに
それでも通って慣れていったって話だ。
 
そう決めて、ここ2か月ほど、
東京のいろいろなところに、
ノートやパソコンを持って歩くようになった。
 
今やネットで検索すれば、
ノマドカフェ、
電源カフェというキーワードで、
 
あなたの街の、原稿が書けそうなカフェはたくさん見つかる。
 
なにせ、東京には喫茶店がたくさんある。
 
(ただし、ノマドカフェ、電源カフェ、Wi-Fiってキーワードじゃないと出てこないです。
原稿書ける、というキーワードだとだめでした。)
 
 
・・・

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で、行った。
 
だが、行ってみて思った。
 
カフェはカフェでも、原稿が書ける場所と、書けない場所がある。
 
友人と行くのが向いている場所と、
一人で原稿を書くのが向いている場所とは
多分違う。
 
書くのに向いている土地と、
遊ぶのに向いている土地は多分違う。
 
 
カフェとしてどうか、ということでは決してない。
図書館としてどうか、ということでも決してない。
 
私が集中して書けた場所。
 
そのことについての、
考察のあれこれを残しておこう。
 
そして、
私はソングライン、ということにも思いをはせる。
アボリジニがソングラインとして口伝した、目に見えない道。
それをたどれば迷わずにたどり着ける見えない道をダウンロードするようにしてアボリジニーたちは歩いた。
 
その生涯で46回の引っ越しをしたといわれる江戸川乱歩が最終的に落ち着いた池袋、立教大の近くのあの家、
その近くにある、池袋モンパルナスとよばれた画家や作家が集まっていた文化村、
村上春樹が長く喫茶店をやっていた千駄ヶ谷、作家になろうと思いついた神宮球場
新宿区のはずれ、落合にある漫画家集団がいたトキワ荘
数多くの文豪がいた新宿区、文京区、
年代を越えて、物を作り書く人々がなぜか多いこの地域、このライン
土地に、場の力があるとしたら、
場と場を結ぶ流れるようなラインがあるとしたら
(この元ネタは松村潔先生です)
 
私はその流れに触れたい。
場の力、見えない流れというものに私は強く惹かれる。
 
本当は、世界中のどこででも原稿が書ける体になりたい。
周囲も他人も気にならないで素晴らしい集中力を発揮できる人に本当はなりたい。
でも残念ながら集中力はかなり低い。
 
なら自分に合った場所を見つければいい。
東京を遊び場にすればいい。
東京は大好きだ。
 
どなたかも東京で居心地の良い場所を見つけられますように。
 
 
★★★没頭できた
★★そこそこ書けた
★書くのは難しい
 
書く予定
原稿を書ける場所をめぐる01:渋谷カフェマメヒコ公園通り店★★
原稿を書ける場所をめぐる02:SUZU cafe(渋谷)★
原稿を書ける場所をめぐる03:六本木ヒルズライブラリー★★★
原稿を書ける場所をめぐる04:コメダ珈琲 西武池袋前店(池袋)★★
原稿を書ける場所をめぐる05:コメダ珈琲 三軒茶屋店(三軒茶屋)★★
原稿を書ける場所をめぐる06:豊島区立中央図書館★★★
原稿を書ける場所をめぐる07:世田谷区立中央図書館★
原稿を書ける場所をめぐる08:HULA★★表参道
原稿を書ける場所をめぐる09:新宿高層ビル群★★★★
原稿を書ける場所をめぐる10:アークヒルズライブラリー★★
原稿を書ける場所をめぐる11:渋谷区立こもれび大和田図書館★★★★
 
文中に出てきた関係書類

 

ルピナス

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ソングライン (series on the move)

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運命を導く東京星図

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<とんぼの本>向田邦子 暮しの愉しみ

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