アカシア食堂レモンの記2

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脱いでいく旅:釧路湿原でキャンプとカヌー04 の前の江の島アウトリガーカヌー

釧路で二人乗りのカヌーに乗る今回の旅をさかのぼること4年前

江の島でアウトリガーカヌーという乗り物に乗ったことがあった。

 

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アウトリガーカヌーとは、
ボディにアウトリガーっていう浮き輪が付いている
4~5人乗りの大きなカヌーのこと。
 
江の島アウトリガーカヌーというツアーを目にしたのがきっかけだった。
※ツアー企画は地球探検隊という会社で今でもツアーあります
 
 
作家・文筆家達の旅の随筆や、カヌーや水にまつわる文章はいくつか読んでいていいなと思っていた。
いつかカヌーという太古の昔からあるその乗り物に
いつか乗りたい、乗りたいと思っていた。
 
人間の脳って
一度想像した事柄は実行したくなるようにできているそうなのだ。
 
その募集を見た時、珍しく、
わーいいなーって全身の血液がちょっと揺れるぐらいに思った。
 
旅行が怖かったのだから、一人で旅行に行こうっていうのはほとんど思ったことがなかった。
なのに、その旅には反応したのだ。
 
江の島には一度行ってみたかったし、
東京から近場で、日帰りで、
初心者でも一人乗りじゃないし大丈夫そう、
舟が大きいから転覆もしなそうだし、
カナヅチでも大丈夫そう、
 
いつもは、なにかをやらない理由を付けるのに
この時は、行く理由を探してた。
 
それでも何日かかかって、思い切って応募した。
 
応募して本当に良かった。
良かったというより、深い強烈な体験だった。
 
体の満足度が想像をはるかに超えた。
 
4年前、2011年の夏は、大震災があった年。
日本中に悲しみや不安が漂っていたし
プライベートでも同時期に
ショッキングな悲しい出来事があって
頭も体も、すっかり重く詰まっていた。
 
アウトリガーカヌーに乗った日は
梅雨明けの日だった。
 
日焼けを越えて水ぶくれになるほどの強い日差しだった。
体は強烈に焼かれた。
 
でもその強烈さが、気持ちいい。
 
パドルをもって、海に浮かぶ
ひたすら漕ぐ 繰り返し漕ぐ
 
慣れない作業に、思考より運動が優位になる
思考がだんだんと止まっていく
 
この原始的な乗り物は
水と体を近づける。
 
ひたすら漕ぐ 繰り返し漕ぐ。
 
慣れない疲れと強烈な太陽に、
島を一周して疲れたあたりで、
 
休憩がてら、漕ぐのをやめ、
カヌーに寝そべって海に浮かぶ時間があった
 
目を閉じて海に揺られる
 
その時起こったことは今でも忘れない
 

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波のリズムと、体内の血液が、完全にシンクロして、
わずかに残っていた思考が完全に停止したのだ。
 
体は、波のリズムに、あまりにもすぐになじんだ
 
いのちは海からやってきたのだ、と思い出していた
からだは波に溶けていきそうだった
私はなくなり、海の音と、波のリズムだけが、この世のすべてになった
 
海は私で、
世界は海だった、
 
私は水で、
水はリズムで、
リズムはいのちだった
 
この時に、詰まっていたもののいくつかは溶けたように思った
どんななぐさめよりなぐさめられた
 
震災と同じ時私は大きな悲しい出来事に会った
やがて癒えていく、ということを私は知っていた
でもあまりにも長い時間を必要とするかもしれない、と途方に暮れていたような時期だった
 
海は私に寄り添って
体をさすり続けるように、私を揺らしてくれた
何も言わずただ、海は歌うように、揺らしてくれた
 
傷つくことも泣くことも強がることもどうしたらいいのかわからないとやけになることも
ただ「そうね」と言われてるみたいだった
良くも悪くもなく、ただ、体をさすられて、私は大きなゆりかごの中にただいるみたいだった
 
なぐさめでもなく、
はげましでもない、
 
大きないのちからの反応、応答
 
絶え間ないフィードバック
言葉も感情もないその場所で、
生きていると起こるすべてのことを包まれた

 

(釧路に到着してない・・・続く)

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カヌーが出てくる素敵な旅の話の数々

 

水辺にて on the water / off the water (ちくま文庫)

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ひかりのあめふるしま屋久島 (幻冬舎文庫)

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島で空を見ていた 屋久島・トカラ・奄美・加計呂麻島の旅

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25年ぐらい前に読んだ気がするだけでその記憶は定かではなのだけれど

 

オーパ! (集英社文庫 122-A)

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水辺というと石牟礼先生の描く不知火の海への既視感を伴う憧れ。同じ時を生きているだけで幸せ。日本語が読める喜び。生きることへの圧倒的な哀愁のような畏れのその繊細さ。そこにある海。

椿の海の記 (河出文庫)

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苦海浄土 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

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 そしてこれが今最も読みたくて図書館にはない本。

アボリジニーがソングラインと呼ばれる目に見えない道に導かれるように歌をたどって旅をするその旅路のことを描いたであろう本。

ソングライン (series on the move)

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